一日の中には楽しさと苦しさがある。それを感じるのが私にとっての旅なのだと、つくづく思う。山の頂に風を受け、麓で人の営みと欲に当てられ、自分もまたその一員となる。今は、雑踏の中の小さな穴ぐらのようなカプセルの中に身を寄せている。
今朝、宿泊した駅前のホテルの朝食バイキングで、隣に居合わせた二十代ぐらいの女の子たちが「ホテル暮らしって憧れるよね」と、大盛りのバイキングプレートを口にしながら呟いていた。私はすかさず「どこが」と心の中で呟いた。ビジネスホテルのサービスなんてたかが知れている。部屋の狭さも、すべてを一室で完結させようとしている無理や歪みはどこにでもひそんでいるというのに。
何度来ていても、友人が住んでいても、ここはまだ「訪れた場所」だ。誰にも会えもしないし、行くあてなんかない。家も持たずにただ歩きつづけるというのは、ずっと孤独と一緒に暮らしているようなものだ。それでも、ひとところに留まれない。自分の性質を受け止めるしかない。「安心」や「安定」はやはりどこにも無いと思う。