受付でベルを鳴らすと、煙草の匂いを纏わり付かせたすきっ歯の男が奥から出て来た。ぼさぼさした髪に白いTシャツと白い短パンの、オーナーなのか料理人なのかアルバイトなのか、あるいは全く関係ない人間なのかよくわからない風情の男だった。私は動揺と興味が同時に湧くのを感じた。
男は「お部屋を案内しますね」とスタスタとスリッパの音を響かせて、広い館内の奥へと歩いていく。
「お風呂はこちらを使ってください」と言われた風呂場ののれんは「男」と書いてある。「今日はお客さん以外予約がないので」「今いる他のお客さんはもう帰られますから」と、なんとなく不十分に感じる説明を受ける。妙に募りはじめる不安感の先にササと蠢く虫を発見する。「何かいましたかね」と聞かれたので「コオロギです」と答えると、案内された部屋の襖を開けている隙に男はコオロギを掴んで外に投げていた。
ひとりで使うには広すぎるほどの和室で一通り説明を受けた最後、「部屋に鍵はありません。今日はお客さん以外予約がないので」と言って男はどこかへ消えた。
男は「お部屋を案内しますね」とスタスタとスリッパの音を響かせて、広い館内の奥へと歩いていく。
「お風呂はこちらを使ってください」と言われた風呂場ののれんは「男」と書いてある。「今日はお客さん以外予約がないので」「今いる他のお客さんはもう帰られますから」と、なんとなく不十分に感じる説明を受ける。妙に募りはじめる不安感の先にササと蠢く虫を発見する。「何かいましたかね」と聞かれたので「コオロギです」と答えると、案内された部屋の襖を開けている隙に男はコオロギを掴んで外に投げていた。
ひとりで使うには広すぎるほどの和室で一通り説明を受けた最後、「部屋に鍵はありません。今日はお客さん以外予約がないので」と言って男はどこかへ消えた。