我々は、愛を敷いて眠りにつくことができるのだという。最も無防備で、最も鋭い。そういう状態は愛の上に或る、と。それはもしかして「安心」のことを言っているのだろうか。それは何処にあるのだろう。私は、本当に眠れた日がいつかあっただろうか。もしそうなら、目が覚めているときだって、そういう場所に行けなかっただろうか。
 私は、この文章を或る日のフェリーの中で書いている。すぐ側では、若い男がロビーのソファーで大の字になって、いびきをかいて寝ている。船は穏やかに揺れている。